お知らせ 【開催レポート】光影が刻むビートの記憶:銀幕を震わせたロックの魂 

2026.03.31

ピーター・バラカン  × 萩原健太 氏が語る「映画とロック」の邂逅

202637日()、少し肌寒さの残る早稲田キャンパス。会場の3号館501教室には約200名の参加者が集まりました。早稲田大学エクステンションセンター主催のサタデーレクチャー「映画とロック」。この日壇上で対談するのは、日本の音楽シーンを長年にわたり牽引してきたピーター・バラカン氏と萩原健太氏です。 

マニアックな検証と”学び”を掲げた本講座は、単なる懐古に留まらず、映画と音楽が互いの運命を変えた歴史的瞬間を追体験する、濃密な時間となりました。 

1.  既成曲が「自由」の象徴となった瞬間:『イージー・ライダー』の衝撃

講演会は、1969年の記念碑的作品『イージー・ライダー』から幕を開けました。萩原氏は、本作が「予算不足ゆえに既成のロックをサウンドトラックに使用した」という制作風景に触れ、当時の窮余の策が結果として映画音楽のあり方を一変させた功績を語ります。

スクリーンに映し出される「ワイルドでいこう(Born to Be Wild)」の爆音とともに、歌詞に含まれる「ヘビーメタル・サンダー」が、後の音楽ジャンル名の由来となったエピソードが紹介されると、会場からは驚きの声が上がりました。 

2. 1956年、ロックンロールが銀幕を席巻した「三種の神器」

議論はさらに遡り、ロックンロール誕生の熱狂が渦巻く1956年へ。バラカン氏は、『ロック・アラウンド・ザ・クロック』『ドント・ノック・ザ・ロック』、そして邦題の誤訳で知られる『女はそれを我慢できない(The Girl Can’t Help It)』を「ロック好きの三種の神器」として紹介しました。

●エディ・コクランの早口な衝撃:若き日のエディ・コクランが「20フライト・ロック」を歌うシーン。ポール・マッカートニーがこの曲を完璧にコピーしたことでジョン・レノンに認められたという逸話が披露されました。 

●リトル・リチャードの怪演:ピアノを叩き、叫ぶように歌うリトル・リチャードの姿。 バラカン氏は、彼が「道化的な役割を担わされながらも、音楽の圧倒的なかっこよさを表現した複雑な存在であった」と分析しました。 

3. フェスティバル映画の極北:魂を削るパフォーマンスの記録

1960年代後半、映画は「コンサートの目撃者」へと進化します。1964年の『タミー・ショー』で見せたジェームス・ブラウン(JB)の神がかったステップと、続く若きローリング・ストーンズの対比。そして、1967年の『モンタレー・ポップ・フェスティバル』へと話は及びます。 

オーティス・レディングが「愛の群衆(Love Crowd)」に語りかけ、魂を振り絞るように歌い上げる「I’ve Been Loving You Too Long」。 

「このパフォーマンスがあったからこそ、忌野清志郎さんの『愛し合ってるかい?』が生まれた」という萩原氏の言葉に、日本の音楽文化に根付く系譜を浮かび上がらせました。 

 ご自身でもPeter Barakan’s Music Film Festivalのキュレイターを務めるバラカン氏(右) 

4.コレクターの悲哀と偏愛:『ダイナー』に見るレコードの「背骨」 

後半で取り上げられたのは、1982年の映画『ダイナー』の一場面。レコードの整理法を巡り夫婦が激しい口論を繰り広げる象徴的な一幕です。 

「ジェームス・ブラウンをロックの棚に入れるなんて!(R&Bに入れるべきだ)」と怒る主人公の姿に、会場の音楽ファンからは苦笑と共感が混ざった拍手が湧き起こりました。バラカン氏と萩原氏は、「レコード一枚、B面の曲名一つが、その時の人生の記憶と結びついている」と語り、コレクターの宿命をユーモアたっぷりに総括しました。 

結び:語り継がれる「教養」としてのビート

熱を帯びたレクチャーは、音楽は耳で聴くだけのものではなく、映画という鏡を通すことで、時代の社会背景、人種間の葛藤、そして個人の記憶と密接に結びついていることを再確認させてくれました。 

銀幕の中で永遠に年を取らない怪物たちの叫びは、今もなお、私たちに「自由とはなにか」を問い続けています。 

 


【主催者より】早稲田大学エクステンションセンターのご案内

本イベントは、早稲田大学エクステンションセンターが企画する「サタデーレクチャー」としてお届けしました。

サタデーレクチャー 〜早稲田の杜の教養シリーズ~

本シリーズでは、第一線で活躍する研究者や専門家を迎え、現代社会、歴史、人間、科学といった多様なテーマを90〜120分のセッションで掘り下げます。土曜日開催のため、平日はお忙しい方々も気軽に参加できる「知の入り口」として運営しています。

年間1,800以上の講座で、さらなる知の探求を

当センターでは、単発のレクチャーに加え、年間1,800を超える「オープンカレッジ」講座を提供しています。

  • 専門性を深める: 各分野の権威による継続的な講義で、体系的な知識を身につけられます。
  • 多彩なラインナップ: 文学、歴史、芸術、最新科学、ビジネス、語学まで、早稲田ならではの知の資源を網羅しています。
  • 柔軟な受講スタイル: 対面だけでなく、全国から参加可能なオンライン講座も充実しています。

日常の喧騒から離れ、一流の講師陣と共に「学びの椅子」に腰かけてみませんか。早稲田大学エクステンションセンターは、新しい視点を求めるすべての方を歓迎します。

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[公開講座] 早稲田大学エクステンションセンター

今後の注目講座:萩原健太先生による春講座

「英米ロック史」が523日より開講。